2025年8月24日(日)に札幌コンベンションセンター大ホールで開催されたイベント「文学フリマ札幌10」に、「現代川柳キャマラッド」として落合魯忠さん、宇佐美愼一さん、河野潤々さんと私、一家汀の四人の共同しました。「文学フリマ」とは、「出店者が「自分が〈文学〉と信じるもの」を自らの手で販売」する展示即売会です。
きっかけは、前年9月22日の「文学フリマ札幌9」でした。落合魯忠さん宇佐美愼一さんがお二人で出店なさっていて、そこに現代川柳群蝶から五人のメンバーが参加した、『群蝶ミニ川柳選書』という、川柳10句を載せたA7サイズ(A4八つ折り)の折り本の第一弾五種類を置かせていただいたのですが、当日会場で、終了間際ブースに河野潤々さんと私も集り、「来年はこの四人で出店しようか」という話になったように記憶しています。
そして今年の1月に開催された札幌川柳社「ファミリーのつどい」で魯忠さんにお目に掛かった時、私のほうから、「今年の文フリはどうしましょう」と改めて確認、その場で愼一さん、そして電話で潤々さんとも連絡を取り、出店が決まりました。グループ名「キャマラッド(フランス語で「仲間」の意味)」もこの日に決定しています。
ただその時はまだ、『群蝶ミニ川柳選書』を除いては何を販売するか決まっていなかったのが、間もなく宇佐美愼一さんから「四人で川柳のアンソロジーを作りませんか?」というご提案があり、一気に話が進みだしました。2月6日には、札幌駅近くの居酒屋さんで四人で打ち合わせをし、出版社の比較検討や、アンソロジーの判型、ページ数、内容についてなど話し合い、目次やあとがきなどを除いた個人ページは一人20ページ、うち3ページは川柳と写真、あるいは川柳と文章などを組み合わせた、自由ページ(カラー可)にしよう、というところまで決まりました。
それぞれの原稿提出期限は6月末ということでしたが、結果的にはそれより早く全員の原稿が集まりました。ただ一つ、ブックデザインが出来るメンバーがいなかったのもあり、出版社を当初予定していたちょ古っ都製本工房さんから、「オリジナルデザイン表紙作成サービス」のあるしまや出版さんに変更したため、写真を挿入することが難しくなり、最初から写真と川柳を合わせるつもりで準備していた愼一さんだけ写真も文章も無しの、全ページ川柳のみということになってしまいました。
7月2日には、第二回のリアルでの打ち合わせになりました。アンソロジーのタイトルと装丁のイメージを皆で考えたのですが、これが難しく……三時間近く話し合い、タイトルは『ときどき放課後、ときどきパラソル』、表紙イメージは「カラフルな毛糸を枠とした、四角基調のステンドグラス諷のデザイン、ビビッドな感じで。使用しないでほしいイメージはパラソルで」というところまでまとまり、原稿の編集は愼一さんが引き受けてくださり、この日は解散しました。ちなみにアンソロジーへの掲載順については、皆、トップバッターとしんがりは嫌がったため(笑)、じゃんけんで勝った順に好きなポジションを取り、最後にバランスを見て、二番目と三番目を入れ替え「河野潤々、一家汀、宇佐美慎一、落合魯忠」という順番に決定しました。
その後はトントンと進み、8月2日には完成したアンソロジーが出版社から届き、6日にはそれを分配するのを兼ねて、3回目の打ち合わせ。当日の設営についてなどを決めて、小一時間で終了しました。
この間、私は『群蝶ミニ川柳選書』第一弾のお色直しと第二弾の作成を進めており、また、ブ―スに敷く布(ポケットつき)を作ったり、当日の設営案をシミュレーションしたり、ミニ選書用のウォールポケットやそれを掛けるスタンドを自作したりもしていました。この辺りの話は、番外編でしたいと思います。
いよいよ当日。お品書きは、
・川柳アンソロジー『ときどき放課後、ときどきパラソル』(700円)
・『川柳刑事』(1,000円)
・落合魯忠川柳句集『オンコリンカス』(500円)
・投稿連作川柳アンソロジー『川柳EXPO2025(川)』『川柳EXPO2025(柳)』(各1,800円)
・『群蝶ミニ川柳選書』全9種類(各50円、セット450円)
・『水脈』第70号(終刊号)(限定無償配布)
『川柳EXPO2025(川)』『川柳EXPO2025(柳)』は、「川」のほうに宇佐美慎一さんが参加なさっているご縁もあり、まつりぺきんさんのご厚意で、無償でお送りいただいたものです。ありがとうございました。『水脈』は、表には並べず、関係者の方々にお配りしました。こちらも無償でいただき、有難いことでした。
私の荷物はこんな感じでまとまりました。主な持ち物は、『群蝶ミニ川柳選書』とウォールポケット、折り本スタンド、ブースに敷く敷布、あとはこまごました小物類です。

敷布が皺にならないように、段ボールを芯にして巻いたりしているのでかさばっていますが、重さはさほどでもありません。折り本スタンドも折り畳んでキャリーケースにシリコーンのケーブルバンドと養生テープで固定して、楽々と移動出来ます。ちなみにキャリーケースは、ノートPCを持ち運ぶために以前購入した、アクタスのトップオープンのSSサイズ(24リットル)ですが、これは優れもので、少し工夫して荷造りをすれば、上部の開口部からすべての荷物を出し入れでき、いちいちキャリーケースを横にする必要がありません。この日も大活躍でした。
設営時に、長机のタイプによっては天板を斜めにして敷布の固定バンドを天板と前板の間に通す必要があるので、お隣の方(長机を共用する方)より前に設営に取り掛かりたい、と早めに会場入り。参加申し込みは魯忠さんがしてくださったので、魯忠さんと落ち合って出店者のステッカーを受け取り、すぐに割り当てられたブースに向かいます。幸い、まだお隣の方は来ていません……が、測るまでもなく長机の奥行きが45センチではなく、60センチに見えます。
敷布を作る時、ブースのサイズによって布の寸法も固定バンドの長さや位置も変わってくるのですが、実は文学フリマ札幌10の公式サイトの説明文にはページによって食い違いがあり、ある箇所には、1ブースのサイズは「幅900mm×奥行450mm×高さ700mm」、他の箇所には「幅900mm×奥行600mm×高さ700mm」、記されていたので、わざわざ魯忠さんに事務局まで問い合わせていただき、「奥行きは450㎜」との回答をもらっていたのです。それだけに、この状況にはびっくり……まさか、公式の回答が間違っているとは思わず、思いっきり奥行450㎜のつもりで敷布作っているし、X(旧Twitter)でもわざわざ他の参加者さんに向けて注意喚起のポストまでしてしまったんですけれども……?!
とりあえず、長机の天板と前板の間には隙間があり、天板を傾けることなく固定バンドを通せたのは良かったものの、長さが全然足りません。幸い、万が一に備えて(?)、長さ2メートルの紐を二本持ってきていたので、それで固定バンド同士を結び合わせ、何とか敷布の固定には成功しました。ふう……心臓に悪いぜ……。
固定バンドと格闘している最中に、河野潤々さんも合流(設営には二人までしか入れないので、潤々さんと私が設営係でした)。お隣の方もいらしてご挨拶を交わし、それぞれ設営を進めます。
潤々さんも設営は不慣れ、私は初めてなので、二人でもたもたしつつも、一時間弱で作業は終わり、いよいよ開場です。魯忠さんと愼一さんも合流して、ブースを確認。売り子は主に潤々さんと私が務めます。
札幌川柳社の方々、『水脈』の同人の方などが、次々に来てくださり、ご挨拶をしたり、一緒に写真撮影をしたり、雑談をしたり……少し離れたところに札幌川柳社のブースもあったので、そちらに行くついでにこちらに来てくださった方も多いようでした。『ときどき放課後、ときどきパラソル』や『群蝶ミニ川柳選書』を買ってくださる方も多く、特に『群蝶ミニ川柳選書』は全9種類セットが良く売れて、バラで持ってきたものをセットにまとめ直す作業が必要になりました。
一方、関係者以外の一般来場者の方々の反応はなかなか厳しく……お隣は短歌のブースで、そちらでは、「僕も短歌をやっているんですよ」とお客様が出店者さんに話しかけているのがちらりと聞こえたりもしたのですが、こちらには「私も川柳をやっています」という方は一人もみえず……逆に何故か、「私は川柳はやっていません!」と宣言されるお客様はいらして、やはり川柳、特に現代川柳というのはまだまだマイナーな文芸なのだなあ、と思い知らされました。
そんな中で来場者の方々が一番反応を示したのが、『川柳刑事』でした。

「何これ? 面白そう!」という感じで立ち止まったり、手に取ってみてくださる方が多く、「限定で美顔シートパックつきですよ」と言うと更にびっくりされました。ただ、1,000円という価格のハードルが高かったのか、なかなかお買い求めまではいかなかったのが残念でした。
そこをクリア出来た感じだったのが、『群蝶ミニ川柳選書』だったのかもしれません。一冊50円という価格が良かったのか、表紙画像の効果か、一般のお客様にもぽつぽつと買っていただけました。見本を手に取っていただけるだけでも嬉しいのですが、真剣に選んだ数冊をお買い求めいただけるのは本当に有難く、反応の良さは『川柳刑事』に及ばずとも、購買に結びついたケースは多かったように感じられました。バラ売りのものが、まんべんなく売れて、一種類も「バラでは売れなかった」ものが無かったのも嬉しかったです。
そして、売り子をしていて便利だったのが、ポケットつき敷布! ペットボトル飲料やコイントレイ、売上管理表をはさんだA5サイズのクリップボード、黒、赤、青のボールペンとサインペン、小さな電卓、差し入れにいただいた飴ちゃんまで、色々入ってその分長机の上や足元がすっきりとしました。この敷布は、コミケではポピュラーなようですが、文学フリマではまだ馴染みがないらしく、休憩時間に会場内を見て回っても、他の出店者さんで使っている人は見当たりませんでした。お隣のブースの方に、「便利そうですね♪」と褒めていただいたのも嬉しく、作った甲斐がありました。また、折り本スタンドのAの字の横棒部分にも、小物が置けて助かりました。
困ったことや改善点、気付いた点としては、
・お金の入れ物は、透明なケースを使ったのですが、不透明のほうが良いと感じました。
・売り子が二人で、何か売れるたびに、どちらがお会計をし、どちらが売上管理表に記入するかでバタバタしてしまったので、あらかじめ役割分担を決めておいたほうが良かったかもしれません。
・売り子をやっているとなかなか休憩したり、他のブースを見て回ったり出来ないので、交代要員がいるのは助かりました。
・最後に収支計算が合わず(売れた部数と残った部数の辻褄は合っているのに、売上げが計算より1,400円も多かった)、結局余ったお金の出所は不明のままでした。
・バリアフリーへの意識の欠如――車椅子で会場を回っているお客様に対して、折り本スタンドの位置が高過ぎて、手も届かないし見るのも難しい状態でした。これは要改善だと思います。
良かったこととしては、「自分たちの作った本、関わった本が売れる!」ということです。やはり、お金を出して買っていただく、というのは重みがあり、とても嬉しいことでした。
また、飴ちゃんやチョコレートを差し入れてくださった方もいらして、有難かったです。
最終的な売上は、
・『ときどき放課後、ときどきパラソル』→11冊
・『川柳刑事』→3冊
・『オンコリンカス』→3冊
・『川柳EXPO2025(川)』→3冊
・『川柳EXPO2025(柳)』→1冊
・『群蝶ミニ川柳選書』全9種類セット→9セット
・『群蝶ミニ川柳選書』バラ→18冊
となりました。片づけを終えて、合わない収支に悩んだあと、四人での最終的な清算は後日にして、私は夫(車を出して、一日会場にいてくれました)と一緒に帰宅。魯忠さん、愼一さん、潤々さんは、ご友人と一緒に二次会のお茶に行ったようです。(複数の方から打ち上げの軍資金をいただいていたのもあり、後日四人でちゃんと打ち上げ会も行いました)
最後に、文学フリマ札幌10に向けて作った川柳アンソロジーである『ときどき放課後、ときどきパラソル』に、卑弥呼の里川柳会の真島久美子さんからいただいたご感想の一部を載せて、このレポートを終えたいと思います。
「(前略)それにしても強烈なメンバーが 集まりましたね。 そして文字が自由に跳ねていて、とても楽しく句を編まれたのだということが伝わってきました。(中略)100ページに満たない四人の世界観に、もっともっとと求めてしまいたくなるのがこの本の仕掛けでしょうか。一人一冊ずつでも絶対に売れたはずなのに…四人の化学反応が起きるのかと思いきや、私には全く四人が別々の個体というか気体というか液体に感じました。化学反応で一つになるのではなく、それぞれの個性をしっかりと楽しませてもらいました。ん~やっぱりもっと読みたい!!!(後略)」
久美子さん、素敵なご感想をありがとうございます! 他にも皆様のお手に渡った『ときどき放課後、ときどきパラソル』や『群蝶ミニ川柳選書』、『オンコリンカス』『川柳刑事』、そして『川柳EXPO2025』が、どうか読む方々に楽しんでいただけることを願っています。
ちなみに、『ときどき放課後、ときどきパラソル』及び『川柳EXPO2025(川)』『川柳EXPO2025(柳)』は以下で購入出来ます。
『ときどき放課後、ときどきパラソル』→「ときパラ屋」(BOOTH)
または、小樽の「がたんごとん」さんでも取り扱っていただいています。
『川柳EXPO2025(川)』(Amazon)
『川柳EXPO2025(柳)』(Amazon)
この記事を読んで興味を持ってくださった方に、ぜひお迎えしていただけたらと思います。
番外編1~折り本編はこちら(Coming soon)
番外編2~折り本用陳列スタンド編はこちら(Coning soon)
番外編3~ブース用敷布作り編(ミシン無し)はこちら(Coming soon)
この記事が、どなたかのご参考になれば嬉しいです。お読みいただきありがとうございました。

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