『大人になるまでに読みたい15歳の短歌・俳句・川柳』

大人になるまでに読みたい15歳の短歌・俳句・川柳 書籍紹介

今日私がぜひお勧めしたい本は、
『大人になるまでに読みたい15歳の短歌・俳句・川柳』です。
三巻構成で、
①愛と恋
②生と夢
③なやみと力
となっており、
①『愛と恋』の巻頭言は穂村弘さん、本巻編集とエッセイは黒瀬珂瀾さん
②『生と夢』の巻頭言は夏井いつきさん、本巻編集とエッセイは佐藤文香さん
③『なやみと力』巻頭言は長嶋有さん、本巻編集とエッセイはなかはられいこさん
が担当しておられます。三冊共通で、短歌選・解説は黒瀬珂瀾さん、俳句選・解説は佐藤文香さん、川柳選・解説はなかはられいこさんです。
書店でこのシリーズを見つけた時、まず川柳が短歌・俳句と並んでちゃんと「短詩」として扱われていることに喜びを覚えました。川柳が、短歌や俳句に比べると「詩」としての認知度が低く、ともすると「言葉遊び」と捉えられていることが多いと感じるのは、あながち私のひがみばかりという訳でもないでしょう。これには川柳の暗黒時代である「狂句100年の歴史」が大きく影響していると思いますが、それについてはまたいつか書きたいと思います。
ともあれ、何て魅力的な題名!! そして内容もまた素晴らしいです。
1ページにつきひとつの作品を収録しているのですが、ページ構成は、
「作者名」
「作品」
「選者による解説(俳句作品で季語のある場合は説明があります)」
「作品のジャンル(短歌か俳句か川柳か)」
「作品の作者のプロフィール」
となっていて、作者や季語について知識がなかったり、短詩を読むのに不馴れでも、すっと作品世界に入っていけます。名前は知っている作者でも、その生涯についてはあまり知らないことが多かった私にとっては、作者のプロフィールや、作品の背景を知ることが出来たのは、作品をより理解するための大きな手掛かりになりました。
どの巻のどの作品も素晴らしいのですが、個人的に特に印象に残ったものをあえて挙げるなら、
①『愛と恋』では
 海のこと言いてあがりし屋上に風に乱れる髪をみている/岸上大作(短歌)
 鞦韆(しゅうせん)は漕ぐべし愛は奪うべし/三橋鷹女(俳句)
 追伸の明るい雨をありがとう/普川素床(川柳)
②『生と夢』では
 うれいなくたのしく生きよ娘たち熊銀行に鮭をあずけて/雪舟えま(短歌)
 玫瑰(はまなす)や今も沖には未来あり/中村草田男(俳句)
 さあ立ってごらん背中は縫(ぬ)い終えた/広瀬ちえみ(川柳)
③『なやみと力』では
 われの一生(ひとよ)に殺(せつ)なく盗(とう)なくありしこと憤怒(ふんぬ)のごとしこの悔恨(くわいこん)は/坪野哲久(短歌)
 戦死せり三十二枚の歯をそろへ/藤木清子(俳句)
 いっせいに桜が咲いている ひどい/松木 秀(川柳)
でしょうか。
もちろん、他にも沢山の秀歌、秀句が掲載されています。題名にあるように15歳前後の若い方たちや短詩初心者の方たちはもちろん、多くの方に短詩文芸の魅力を伝えられるシリーズだと思います。
この記事を通して、一人でも多くの方にこのシリーズについて興味を持っていただければ幸いです。

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