10月1日まで北海道立文学館、常設展示コーナーにて開催中の「文学館アーカイブ『川柳・斎藤大雄の宇宙』」を見てきました。
毎回の「文学館アーカイブ」と同じく、さほど大きくはないコーナーですが、なかなかに見応えがありました。
内容は、
・プロフィール
・略年譜
・岡崎守氏(札幌川柳社名誉会長)の言葉
・川柳句集『春うらら雪のんの』より抜粋された斎藤大雄氏の言葉
・著書の実物展示
・『雪やなぎ』
・『逃げ水』
・『刻の砂』
・『北の座標』
・『斎藤大雄句集』
・『追憶ハ雪』
・『句集 根 北海道五人集』
・『川柳句集 喜怒哀楽』
・『冬のソネット』
・『春うらら雪のんの』
・『真夜中のナイフ』
・『北海道川柳史』
・『選者のこころ』
・『現代川柳ノート』
・『川柳のたのしさ』
・『名句に学ぶ 川柳うたのこころ』
・『現代川柳のこころとかたち』
・『田中五呂八の川柳と詩論』
・『百歳力をつける せんりゅう養生訓』
・『川柳力』
・『現代大衆川柳論』
・『川柳入門 はじめのはじめのまたはじめ』
・『川柳はチャップリン』
・『情念の世界 愛憎と欲望の刹那を句に探る』
・『情念句 女性川柳の手引き』
・『川柳の世界 伝統川柳から現代川柳』
・『現代川柳入門 現代川柳選7』
・『川柳講座』(第1篇~第5篇)
・『残像百句 現代川柳の鑑賞』
・自筆はがき
・川柳さっぽろ
・昭和33年3月2号
・昭和34年1月12号
・No.106~117
・2008年8月 605号(哀悼 斎藤大雄)
・川柳マガジン 斎藤大雄特集号
・斎藤大雄の川柳と命刻
・斎藤大雄さんをしのぶ栞
・斎藤大雄五十句
・斎藤大雄所蔵 柳人自筆資料(色紙など)
・越郷黙朗
・川上三太郎
・時実新子
・岸本水府
・井上剣花坊
・村田周魚
・寄せ書き(田中五呂八を偲ぶ会 昭和48年2月11日)
・斎藤大雄自筆資料
と盛り沢山。
私が斎藤大雄さんのお名前を知ったのは、たまたま古書店で見つけた『北海道川柳史』の著者としてでした(余談ですが、この本は名著だと思います。ネットや古書店で買えますので、ご興味のある方は是非!)。 その後、『選者のこころ』も読み、北海道の川柳界を牽引したすごい方だという認識はあったのですが、詳しくは存じ上げず。その斎藤大雄さんが、一気に身近に感じられる、とても良い展示でした。
特に、川柳の世界に足を踏み入れたきっかけが、お姉さまが読んでいた映画雑誌『平凡』に、漫画つきの川柳欄があり、何気なくそこに投句したら
人だかり用もないのに寄ってみる
の句が、「『たしか川上三太郎選』で入選、肉体労働をしての日当が240円の時代に、ちょっと頭を使っただけで大金が転げ込んでくるなんて夢みたいなものであった」「これが幸か不幸か、私の投句マニアへの道の始まりとなった」というものであったのは、同じく賞金目当てに川柳をはじめ、ほどなくして現代川柳に出逢った身としては、親近感が感じられて、改めて、川柳の世界への入り口は「色々あって良い」と思った次第です。
また、五十句のなかでは
崩れゆくいのちを抱いて原稿紙
生きているいのちなんにもできずいる
亡母いたら降りたと思う通過駅
生き抜けと仏の掌からまたこぼれ
人間が好きで失恋ばかりする
二人きりになっては困る人といる
などが佳いなあ、と心に残りました。思うに斎藤大雄さんという方は、本当にとても「人間が好き」な方だったのではないでしょうか。川柳という文芸の根っこには、その心があると感じますので、まさに「川柳の申し子」のような方だったのでしょう。
そんなこんなで、札幌近郊の方にはお勧めの展示です。また、この記事を通じて、斎藤大雄さん、ひいては北海道の川柳やその歴史に少しでも興味を持っていただければ幸いです。
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