感想とご紹介・・・渡辺美輪×徳道かづみ『川柳タッグマッチ』

エッセイ
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本日ご紹介、おすすめするのは、渡辺美和さんと徳道かづみさんの共著の川柳&エッセイ集である『川柳タッグマッチ』(神戸新聞総合出版センター)

2002年末、徳道かづみさんが大阪に越してきたことがきっかけで、渡辺美輪さんと徳道かづみさんは共著で「川柳集『タッグマッチ』」を出されたのですが、「『恋愛』という同じテーマで句を出しあい、五十句で二人の個性の違いを編み出した」その川柳集が、今回ご紹介する「川柳タッグマッチ」出版のきっかけだったそうです。

「川柳集『タッグマッチ』」出版後、神戸新聞から「紙上タッグマッチをやりませんか」と連載の話が出て、同じ題を元にした川柳とエッセイを、水曜日の夕刊に連載。その後紆余曲折を経て、連載分38編に新しく「エクストラマッチ」10編を加えて2007年に出版されたのがこの「川柳タッグマッチ」とのことです。

内容は
「プレマッチ」
顔見世・酒・生まれる・月・旅・優しい・許す
「タッグマッチ」
走る・クリスマス・夢・闘う・雪・猫・甘い・オリンピック
「タイトルマッチ」
忘れる・卒業・美しい・遊ぶ・桜・新しい・眠る
「デスマッチ」
風・遠い・泣く・雨・明ける・白・願う・哀しい
「リターンマッチ」
海・ひまわり・弱い・残る・虫・嘘・抱く・感謝
「エクストラマッチ」
時計・書く・借りる・遅い・青・愛・帰る・笑う・煙草・川柳

エッセイは渡辺美輪さんと徳道かづみさんが交互に「先攻」「後攻」として書かれています。400~500字と短めですが、キレがあり読みごたえたっぷり。一題ごとに添えられてる写真も味わいを増します。

構成は縦書きで、まずお題がページの真ん中に、お二人の句が両側に一句ずつ。
ページをめくると上段(先攻)と下段(後攻)に分かれてエッセイになります。エッセイの締め括りにも、同じお題で別の句が添えられていて、ひとつのお題で「二度美味しい(時にはエッセイ中に句があって、さらにお得?なことも)」です。そして、最後に写真。

字が大きめでフォントも読みやすいのも嬉しいポイントです。

川柳もエッセイも、好きなものがたくさんあって、全部書きたいほどなのですが、一句/一文ずつ挙げると

 許す気で来ました黒のローヒール(徳道かづみ)
 美しい話と書いてウソと読む(渡辺美輪)

と、渡辺美輪さんの「嘘」のエッセイ、徳道かづみさんの「哀しい」のエッセイなどは絶品です。渡辺美輪さんのエッセイは、最後の一文でくらりときます。徳道かづみさんのエッセイは、「哀しい」という状態を決壊させるための儀式へのこだわりが共感を誘います。

まえがきは渡辺美輪さん、あとがきは徳道かづみさんです。

また、本書を読むことで見えるお二人の関係性がとても素敵です。「酒と川柳が私たちを繋いでいる(まえがきより)」と言いますが、それだけではないお二人の親しくも真剣な「対話」に私は惹かれます。
そして佳い句の多いこと! 「平明で深い」句、好みを越えて「よいものはよい」と思わせてくれるような(私は個人的には渡辺美輪さんの作品も徳道かづみさんの作品も大好きなのですが)句がたくさん収録されています。神戸新聞も良い企画をしたなあ。連載をリアルタイムで読めた当時の読者さんが羨ましくもありますが、こうしてまとまったものを、しかも「エクストラマッチ」まで読めるのもまた至福・・・おすすめです!

追記:在庫ありとのことです。お申し込みは、徳道かづみさんのTwitterのDMまで!

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